BRIEFING.100(2005.8.25)
敷金返還債務の控除(3)
不動産鑑定評価において、賃貸中の建物に付着した敷金返還債務を、どのように控除すべきかを、前回手法毎に検討した。これをまとめると次表の通りである。
控除方法 | ||
原価法 | 割引控除すべき | |
収益還元法 |
直説還元法 | 単純控除すべき |
DCF法 | しくみ上、割引控除 | |
取引事例比較法 | 採用事例による |
そして、手法によって控除方法が異なる以上、その控除は各試算価格の段階で行わなければならない。
さらに関連する論点として、次のような問題がある。これらについては、またの機会に検討することとしたい。
●敷金返還の条件が賃貸借期間の長短によって定められている場合。たとえば、10年未満なら半分返し、それ以上なら全額返還といった契約で、5年目で売買する場合、返還債務は全額か、半分か。
●建物賃貸借契約とは、別個の金銭消費貸借契約と考えられる建設協力金の場合。返還債務が当然に新所有者に承継されるか否かに関連する(BRIEFING.25参照)。
●敷金に利息を付す場合。
●建物所有目的の土地の賃貸借の場合。返還債務が実現する機会は半永久的に訪れない。