BRIEFING.102(2005.9.8) 

権利金等の規制と市場の縮小(1)

経済財政諮問会議がまとめた「日本の21世紀ビジョン」には、住宅の将来像が示されており、礼金や更新料の撤廃・抑制も盛り込まれている。

一方、関西に多い「敷引き」が無効とされた判決(神戸地裁2005年7月)も出ている。

しかし、礼金・権利金・敷引き(BRIEFING.6566参照)といった、賃借人に返還されない一時金(以下、権利金等という)の禁止は、賃貸マンション市場の縮小をまねくおそれがある。

今、権利金等禁止の賃貸マンション市場に、次の2種類の賃借人がいるとする。但し、継続賃料が正常賃料と乖離するようなインフレ、デフレはないものとする。

@短期間で転居を繰り返す身軽な人
A長期間居住する安定的な人

賃貸人としては賃借人の交代費用(BRIEFING.46参照)の負担を小さくしたいので、できるだけ@を避け、Aと契約したい。

しかし契約段階では@Aの区別がつかないため、両者を受け入れざるを得ない。そして、@の交代費用も@A両方の賃料から捻出することになる。

その結果、Aにとっては賃料が割高になり、中には分譲マンションに逃げ出す人も出てくる。

すると市場では@の割合が高まり、さらに交代費用が増加し、賃料水準が上がる。それはさらに@の割合を高め、やがて@のみが、そして特に@の性格が強い人のみが市場に残る。

かくして市場は縮小してゆく可能性がある。通常使用による損耗の過大解釈(BRIEFING.96参照)の場合と同じ「情報の非対称性」が働くと考えられる。

次回はその対策を検討する。


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