BRIEFING.105(2005.12.8)

共益費を賃料と区分する意義

賃貸ビル・マンション等において、賃貸人は賃借人から、賃料とは別に“共益費”や“管理費”を徴収するのが一般的である。

この“共益費”とは、共用部分の維持管理費、光熱水費等をまかなう実費相当額と理解されているがことが多い。

しかしその内訳となると、これといった規定はなく、鉢植えのリース料や管理人の人件費まで含めるのか否か、かなりあやふやである。したがって、マンションで賃料の1割程度、事務所で2割程度といった相場で決められる場合が多く。「第2賃料」と理解されるに至っている。

実際、賃料と区分する意義を認めず、「共益費なし」「共益費は賃料に込み」とする物件も多い。契約上区分していても、仲介業者間では合算し、「共益込みで・・・」と会話されることが多い。

もし、これらを区分する意義があるとすれば、次の点だろう。

@共益費は賃料と異なり協議なしに値上げが可能とも考えられる。
A抵当権者が賃料を差し押さえても、共益費にまでは及ばない。
B共益費は、会社の家賃補助の対象外である場合が多い。
C共益費は、生活保護世帯の基準家賃とは別枠である。
D通常の賃貸というサービス以外のサービスを提供しやすくなる。

@は賃貸人にとっての利点であるが、あまり説得力がない。
Aは賃貸人(抵当権設定者)にとっての利点であるが、特殊な場合のことである。
Bは賃借人を雇用する会社にとっての利点であるが、これも特殊な場合のことである。
Cは、物件の選択肢が広くなるという点で賃借人の利点だが、やはり特殊な場合である。
Dは、共益費という料金をとることにより、共用の庭園や談話室を整備しやすくなるということである。

これらのうち、@〜Cに大きな意義は認められない。Dについても、賃料に含めて考えられないこともないから、共益費が絶対必要というわけでもないのである。


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