BRIEFING.109(2006.2.9)

差額配分法の配分に対する基本的スタンス

継続賃料を求める手法の1つに、差額配分法がある。

これは、対象不動産の新規賃料と、実際賃料との間に発生している差額について、契約の内容等を総合的に勘案して、当該差額のうち貸主に帰属する部分を適正に判定して得た額を実際賃料に加減して試算賃料を求める手法である。

一般に、鑑定評価の実務上、双方に特段の寄与(または責任)が認められなければ、差額を双方に半分ずつ配分するということが多い(BRIEFING.44参照)。

継続賃料の手法のうち、唯一新規賃料と関連づけられた手法である。

しかし、新規賃料の水準が一貫して上昇または下落だった場合に、賃料が長期間据置かれていたなら、差額配分法によって求められる試算賃料は、まだまだ新規賃料に近づけない。

一方、それでも実際賃料からの改定幅は相当に大きなものとなる。

大きな賃料格差が生じてしまっていた以上、避けられないことである。

新規賃料と実際賃料のどちらを重視すべきかは1つの論点である。つまり、新規賃料との大きな差額はできるだけ早期に縮小してやるべきなのか、反対に、実際賃料からの変動幅をできるだけ縮小してやるべきなのか、ということである。

この2つの考え方は、以下の通り整理できる。そこには基本的スタンスの相違がある。

●新規賃料尊重説・・・経済的公平性重視
●実際賃料尊重説・・・契約の安定性重視

インフレ(またはデフレ)で物の価値が変動し、実質的な貨幣価値が目減り(または増大)しているのに、賃料だけは名目を維持するというのは、不合理である、と考えるのが新規賃料尊重説である。

しかし、賃料減額請求権を放棄した定期建物賃貸借契約や、動産のリース契約では、長期に渡る契約期間中、賃料が固定されていることに何ら問題がないことに鑑みれば、必ずしも名目の賃料を維持することが不合理とも思えない、と考えるのが実際賃料尊重説である。

30年前からの地代、あるいはバブル期からの家賃など、今の新規賃料との格差は大きいと考えられる。これをどのように調整するか、議論が必要である。


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