BRIEFING.011(2001.11.22)

不動産の取得(流通)に係る税と鑑定評価

不動産の取得(流通)に係る税としては、登録免許税(国税)及び不動産取得税(地方税)がある。不動産の取得に際して必要な資金として、不動産の取得を予定する者は必ずこれらを考慮することだろう。一方不動産鑑定評価の実務においてこれらを考慮することはほとんどないと言ってもよいが、これに関しては次のように考えられる。

不動産の価格を求める鑑定評価の手法には、原価法、取引事例比較法、収益還元法等がある。

原価法は不動産の費用性に着目した手法であるが、再調達原価にこれを加算しない結果、求められる積算価格は低位に求められることとなろう(減価修正をいかに行うかという問題もあるが)。

取引事例比較法は不動産の市場性に着目した手法であるが、取引事例に係る取引価格にこれらの税が含まれていない限り、求められる比準価格に税の影響はないと言ってよいだろう。

収益還元法は不動産の収益性に着目した手法であるが、初年度の費用にこれらの税を加算しない結果、収益価格は高位に求められることとなろう。

さて、3つの手法から求められる試算価格は、税を考慮しない結果、それぞれ、低位に・影響なし・高位に、と導かれる。これらの3つの試算価格をいかに調整するかは一概には語れないが、結果的に鑑定評価額への影響は相殺されて小さなものになるであろう。したがってこれらの税を考慮する必要性は低いのではないか。

この結論は、不動産の売却を前提としない評価における税の取扱い(考慮すべきでないと考えられる)と整合性を有し、取得を前提とする場合の評価においても、現状の税の取扱い(考慮しないことが多い)に妥当性を与えるものとなるのではないか。


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