BRIEFING.110(2006.2.16) 

建築線が個々の不動産の容積に及ぼす影響

建築線によるセットバック(BRIEFING.93108参照)は、建物の壁面を現況の道路から後退させ、地域の環境を改善するものである。その後退部分を統一的に整備することにより、その効果はさらに高まる。

また、個々の土地に対しても、容積率算定の基礎となる道路幅員が広くなることにより、利用可能容積を増加させるという効果がある。

しかし、セットバックによって敷地面積が減少するため、従前敷地に対する利用可能容積に比べ、セットバック後利用可能容積が減ってしまう場合もある。

その効果のプラス・マイナスは間口・奥行の関係により異なり、個別に判断しなければならない。

下表@〜Cは、指定容積率600%の商業地に存し、いずれも面積100uで、現況幅員8mの道路に面しているものとする。基準容積は480%(幅8m×60)であり、利用可能な建物の延面積は480u(100u×480%)となる。

ここに幅10mの建築線があると、1mのセットバックが必要となるが、基準容積率は指定容積率いっぱいまで利用可能となり、延面積は下表の通り(道路斜線は考慮していない)となる。

  @ A B C
間口(m)   25   20   10   5
奥行(m)   4   5   10   20
後退面積(u)   25   20   10   5
敷地面積(u)   75   80   90   95
可能延面積(u)  450  480  540  570
延面積増加率(%) -6.25 +0.00 +12.50 +18.75

@では、建物の可能延面積がマイナスとなる。間口が広すぎて後退面積が大きくなるからである。

両方の道路に建築線のある角地もマイナスとなる可能性が高い。

建築線の指定という地域要因が地域内の個々の不動産の個別的要因に及ぼす影響は様々である。


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