BRIEFING.111(2006.3.23) 

建物の経年劣化と建付減価の発生

建物及びその敷地の積算価格は、基本的には土地建物別々に求められ、これらを合計することにより求められる。しかし土地の価格が建物の価格と全く別に決定される訳ではなく、建物が環境に適合していなかったり、敷地と均衡していなかったりした場合、すなわち、敷地が最有効使用の状態にない場合、土地価格はそれが最有効使用の状態にある場合に比べ下方に修正される。

これを建付減価と言う。

たとえば、繁華街における一戸建住宅、中高層事務所地域における低層事務所ビルなどの敷地には、建付減価が発生していると言える。

建物が土地の効用の発揮を妨げている結果が、土地の価格にも影響を及ぼしていると考えられる。

では、建物の用途、規模の点では最有効使用の状態と言えるが、建物の経年劣化が進んでいる場合はどうか。

たとえば築40年の事務所ビルを想定する。適切なメンテナンスが施されてはいるものの、耐震性、機能性、快適性、意匠性に劣り、その結果、賃料水準も新築のものにくらべて低位であるとする。

この場合もやはり、建付減価を認識すべきであろう。

土地の最有効使用とは、その土地の効用が最高度に発揮される可能性に富む使用方法であり、厳密には、建物が新築の状態であるものと解する。とすれば、極端に言えば、築1年であってもほんのわずかに建付減価は発生していると言える。

一般に不動産の取引においては、土地建物の価格内訳はさほで重要ではないため、土地の建付減価は、建物の減価の中にまぎれていることが多い。すなわち、土地の価格は常に更地価格と考えられることが多いのである。

鑑定評価においても、建付減価が僅少である場合には無視することが多いし、認識した場合の査定の基準も、建物取壊し(更地化)費用が上限といった程度の考え方しかない。

土地と建物とを区分しない収益価格が重視される中、土地の建付減価と、建物の減価とを区分する意義は何か、どこまで厳密に区分できるのか、議論の必要があろう。


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