BRIEFING.114(2006.5.29) 

事業用借地権付建物の積算価格

法定の3種類の定期借地権のうち、事業用借地権は設定できる期間が短い(10年以上20年以下)ため、賃借人が建てる建物は一般に簡易な1〜2階建てのものとならざるを得ない。そしてそれは、コンビニエンスストア、ドラッグストア等の出店に多く利用されている。

しかし、簡素とはいえ、期間満了後も十分に使用可能な建物である場合が多い。それなのに、再契約できなければ、建物を取り壊して土地を返還しなけらばならない。

では、借地期間満了が1年後にせまった「定期借地権付建物」の積算価格はいかに求めるべきであろうか。

うまく再契約できれば価値は十分にあるが、来年取り壊さなければならないとすれば価値はほとんどない。

これに対する考え方は次の2つに分けられる。

@契約期間無関係説
A契約期間償却説

@は、借地期間がいつ切れようが建物そのものには何ら関係ない、物理的に何ら変わりはない、とする考え方である。

Aは、建物が取り壊される時期が決まっている以上、建物の価値はその残存期間に応じたもの、とする考え方である。

この点、法人税は、今のところ@説である。つまり、建物の減価償却は通常の法定耐用年数に従って行い、建物を本当に取り壊した時に初めて簿価を一気に除却するということになる。

固定資産税も@説であろう。外観からは定期借地権かどうか知る由もない。

一方、企業会計は、A説が一般的である。重要な会計方針として、耐用年数を定期借地権の残存期間とすることを開示している企業が多い。適正な費用配分のためには当然であろう。但し再契約で資産が復活する(利益も生ずる)ことになってしまう。

火災保険ではどうだろうか。来年取り壊さなければならない建物に通常の火災保険がかけられていたとすれば、契約者は、火災で全焼してくれることを願うであろう。放火を誘発することにもなりかねない。かと言って期間途中で全焼しても再築費用が出ないようでは困る。

では、鑑定評価ではどうだろうか。今のところ、通説はないがA説が妥当だろう。

また、積算価格については@説、収益価格についてはA説とし、収益価格中心の調整を行うという考え方もあろう。そこに再契約の可能性を加味すべきであるが、恣意性の排除には十分留意しなければならない。


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