BRIEFING.115(2006.7.20)

J・リート上場から5年−キャッシュフロー表の検証を

賃料を維持またはその増額を保証したサブリース目的のオフィスビルや、大規模賃借店舗における賃料減額請求権の有無について、多くの判決が出されてきた。その結論は、概して言えば、原則通り減額請求権を排除する特約は無効、ということと思料する。

しかし、事業を主導した賃借人は、当初の目論見が破綻したことを、プロとして重く受け止めなければならない。

地主に事業を決断させた収支計算は、今更分析するまでもなく見当はずれのものであったと言わざるを得ない。

ところで、日本にも定着した不動産投資信託の目論見はどうであっただろうか。

不動産投資法人が不動産を取得する際に行う不動産鑑定評価においては、その手法としてDCF法の採用が義務づけられている。J・リート上場から5年経った今、そのキャッシュフロー表等の詳細を投資家に開示し、実績と比較してみてはどうだろうか。

物件毎に、賃料収入は予想通りであったか、修繕費等の諸費用はどうであったか。また、すでに売却した不動産については予想していた価格と比べてどうであったか。

目論見から違っていても、恥ずべきことはない。誰も数年先の予測が当たることなどもともと期待してはいないからである。それに、賃料自動増額特約を本気で守れると考えたバブル期の「プロ」に比べれば、全く問題ない。

それでも開示にこだわるのは、投資法人が、設立母体の所有していた物件を他の物件に比べて割高に取得していなかったか、検証が可能だからである。

これまで、キャッシュフロー表の開示を求める声はあまり聞かれなかった。しかし今日、利益相反がなかったかを遡及して検証するために、そして今後の利益相反を抑止するために、キャッシュフロー表の開示をすべきである。


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