BRIEFING.119(2006.09.27)

利回りの低下による不動産価格の上昇

不動産の価格は、その利用価値から導かれる収益価格によって決まるようになってきたと言われる。しかし収益価格を左右するものは利用価値だけではない。

下式は、純収益、純収益利回り(BRIEFING.74参照)及び収益価格の関係を表している。

純収益 / 純収益利回り = 収益価格

純収益が増加、または純収益利回りが低下すると価格が上昇することがわかる。確かに収益(利用価値に相当)も重要であるが、利回りの影響も大きい。

純収益利回り(償却前の場合)の低下の原因を整理すると次の通りとなる。

@純収益の長期継続的増加またはインフレへの期待
A不動産に対する投資家の理解・信頼の拡大
B技術革新による建物の経済的耐用年数の伸長

名目の利子率からインフレ率を引くと実質の利子率になるのと同様で、@は利回りを低下させる。

Aは、これまで利回りに上乗せされていたリスクプレミアムを減少させ、利回りの低下に結びつく。

Bは、利回りに上乗せされていた建物の経年劣化による減価リスクを緩和し、利回りの低下につながる。

これらのうち、近年の不動産価格上昇は、特に@に起因するところが大きいものと思われる。また建物の老朽化を軽視した結果のBも大きい。

収益不動産の純収益利回り(償却前)は、かつて7〜8%のところ、純収益そのものに変動がないのに5〜6%に、そして直近では4%台にはいろうかといった具合である。

利用価値に変わりがなくても、価格の上昇は利回りの低下で実現する。8%の利回りを4%にすれば、価格は2倍になるのである。

利回りは、将来への期待・見込み・予測に依存している。そしてこれらには、主観、楽観、恣意が介在し易いということに留意しなければならない。


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