BRIEFING.120(2006.10.05)
スライド法における変動率の“総合的勘案”
継続賃料を求める鑑定評価の手法には、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法の4つがある(BRIEFING.78、69参照)。
このうちスライド法(BRIEFING.81参照)は、現行賃料を定めた時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。
変動率は、土地及び建物の価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数等を総合的に勘案して求めなければならない。
そして変動率は、実質賃料(BRIEFING.89参照)ベースの純賃料に乗じるのが基本である。減価償却費をも控除した純賃料か否かは問われていない。
さらに、それぞれに「即応する適切な変動率」が求められる場合には次の6種類のどの賃料に乗じることも認められていると解する。
支払賃料ベース | 実質賃料ベース | |
賃 料 | 支 払 賃 料 | 実 質 賃 料 |
純賃料(償却前) | 償却前支払純賃料 | 償却前実質純賃料 |
純賃料(償却後) | 償却後支払純賃料 | 償却後実質純賃料 |
しかし、どのような変動率が上記6種類のどの賃料に「即応する」のか明らかでない。
また「適正な変動率」とは何か。今のところ統一的な考え方がないのが現実である。したがって評価主体の主観や独善(やや言い過ぎか)により「適正な変動率」が決定されてしまう。
例えば、物価はほぼ横這い、建築費は若干上昇、地価は下落という状況において、どれに重きを置くかによって変動率の正負が入れ替わる可能性もある。
評価主体によって方向性までもが異なれば、鑑定評価の信頼性はゆらぐ。
何らかの統一的処理が望まれる。