BRIEFING.121(2006.10.12)

継続賃料の鑑定評価と建設協力金の運用益

大規模小売店舗、コンビニエンスストア等の出店手法として、建設協力金方式(BRIEFING.25参照)がある。

事業者が、資力のない地主に建設費相当の一時金を提供して建物を建ててもらい、その建物を一括賃借して営業を行う。そして、家賃と相殺する形で、あるいはそれとは別途、一時金を長期分割返済してもらうのである。このような一時金を建設協力金と言う。

10年間据置いて、以降10年間で毎月1/120ずつ、あるいは、1年〜20年目の各期末に毎年1/20ずつ、といった返還方法が多い。

建設協力金は高額であるから、その実質賃料(BRIEFING.89参照)に及ぼす影響も大きい。そしてその返還が進むにつれ、実質賃料は自動的に下落してゆく。その結果、継続賃料の鑑定評価に次のような問題を生ずる。

@差額配分法:自動下落によるの差額の帰属分をどう判断するか。
A利回り法 :自動下落による利回りの低下分も復元させるべきか。
Bスライド法:自動下落による賃料の下落を放置してよいか。

いずれも、支払賃料ベース(BRIEFING.48120参照)で手法を適用する場合には問題とならないが、実質賃料ベースで適用する場合に問題となってくる。

実質賃料が下落してゆくのは、契約当初に予定されていたことであり、その後の改定にこれを考慮してはならない(自動下落別枠説)のか、改定は「改めて定める」のであるから、下落した事実も勘案して考え直すべき(自動下落勘案説)なのか。

両説の主張は概ね次のような所だろうか。

●自動下落別枠説
自動下落は、借主にとって予定されていた当然の期待であり、別枠で保護すべき。
賃料の自動増額特約(BRIEFING.34、35、36参照)は原則無効でも、減額特約は有効。
建設協力金は、賃貸借契約とは別個の金銭消費貸借契約によるもの。

●自動下落勘案説
(建設協力金の返還)=(実質賃料の下落)という認識は当初から当事者にない。
実質賃料が下落したという事実に変わりはなく、改定に反映させるべき。

なお継続賃料評価の実務では、預かり期間中の平均運用益を、実質賃料に計上する場合もある。しかし返還終了後においては、避けて通れない問題である。


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