BRIEFING.131(2007.03.08) 

地価と家賃の相関関係−「期待賃料先行説」

地価が上がるから家賃が上がる(地価先行説)のか、家賃が上がるから地価が上がる(賃料先行説)のか、それは悩ましい問題である。

賃料先行説は、実際の賃料収入が上昇すれば、その元本価値も上昇するはず、という分かり易いものである。

一方の地価先行説は、地価が上がればそれに期待される賃料も上がるはず、というものだが、賃料は市場で決まるから(固定資産税の上昇等はあるとしても)その影響は限定的だ、という反論があって旗色が悪い。

しかし、現実社会を見ると、地価先行説を示唆しているとも考えられる。土地の取引価格が先走って急上昇・急降下し、家賃はそれに遅行して上昇・下落に転じるといったことが観察されているからである。

では、賃料が変化する前に地価が先行して変化するのはどうしてだろうか。

たとえば、近くに新駅ができることになった、大手企業の本社が引っ越してくることになった。これらは、その地域の地価上昇をもたらす。それは、その地域の賃料が、将来、上昇するだろうという期待を織り込んで価格が形成されるからだろう。

また、地域内に具体的変化がなくても、全国的なオフィス需要の高まり、高齢者の都心回帰、といった予測により、それによる賃料の変化を見込んで価格が変化するだろう。

つまり、「地価先行説」でも「賃料先行説」でもなく「期待賃料先行説」が正しいと言うべきである。

収益還元法の考え方では、現実の賃料に変化がなくとも将来への期待が還元利回りを低下させ、収益価格を上昇させる、と説明できる。

積算法の考え方でも説明できる。たとえば、基礎価格が期待を反映して過大となっていたとしても、その期待が期待利回りを低下させるため、そこから求められる積算賃料は中立的で、今の賃料としては適正に求められるはずである。

しかし、期待賃料に基づいて形成された取引価格は、仮の価格と言ってもよい。

やがて実際の賃料の変化が、先行した価格の変化を追認するか、あるいは先行した価格の変化を否定し取引市場に撤回を迫るか、ということになる。


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