BRIEFING.135(2007.04.09)

建物賃貸サービスの原価(1)

原油価格が上昇すると、ガソリンの小売価格は一斉に引き上げられる。在庫があるとは言え、近い将来、ガソリンの原価が上昇してくることが確実だからである。

分譲マンション市場においては、近年の用地の仕入れ価格の上昇が、新築分譲価格に影響を及ぼしてきた。いわゆる「新価格」物件が供給され始めたのである。

オフィスの賃貸市場においてはどうだろうか。確かに用地の仕入れ価格は高騰している。だがそれは新規賃料に影響を及ぼすのであろうか。

ところで、建物賃貸サービスの原価とは何であろうか。

維持管理修繕費、水道光熱水費、公租公課、損害保険料、減価償却費などだろう。とすれば、土地の取得費は原価を構成しないことになる。

しかし土地が賃貸収益に寄与していることは言うに及ばず、その収益のうち、土地に帰属する部分は少なくない。

なお、これは会計上は費用でなく利益配分に含まれる性格のものである。

しかし、その土地の所有者やその所有会社への投資家達に対する適正な報酬、あるいは、土地を所有し建物の敷地として利用するためのコスト(仮に「敷地提供費」と呼ぶ)ととらえれば、これも原価に含めるべきと考えられる。

そして、簿価(取得費)が安いのだから安い「敷地提供費」でがまんしておけ、というわけにはゆかない。

なぜなら、建物賃貸サービスの報酬(賃料)は市場で決まり、敷地の簿価とは何の関係もないからである。敷地の簿価が安いから賃料も安いとか、高いから賃料も高いということは全くない。

結局「敷地提供費」は、市場の賃料から求められる土地の価格、すなわち時価に依存して決定されると考えられる。

さらに土地所有者等が期待する「敷地提供費」は、市場の金利水準にも依存すると考えられる。高金利の時代にはそれなりの高利回りが期待されるからである。

そうすると建物賃貸サービスの原価を構成するものは、土地の取得費そのものではなく、「敷地提供費」(=土地の時価×期待利回り)であると言えよう。そして、土地の取得費そのものが新規賃料に影響するのではなく、(地価水準×金利水準)が影響すると言うべきである。


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