BRIEFING.137(2007.04.23)

売れ残りマンションの半額値下げに慰謝料の判決

売買価格は後から改定できるものではなく、賃料は後から改定できるもの、という原則は、ここ数年間のいくつかの判例で確認されてきたところである(BRIEFING.002030参照)。

具体的には言えば、売れ残ったマンションや宅地の値下げ販売は問題なし、サブリース契約や自動増額特約でも賃料値下げ可能、という結論である。

デフレに苦しむ不動産業界は、これらの判決に注目してきたが、誠に当たり前の結論であったと言うべきであろう。

さて、そんな中、兵庫県住宅供給公社が同県芦屋市で分譲した震災復興住宅(12階建てマンション、203戸)において、既購入者が、売れ残った70戸を半額に値下げして販売した公社に対し賠償を求めた控訴審判決があった(4月13日大阪高裁)。

判決は既購入者の原告住民の“経済的損害”について「商品価値は市場の需要と供給の動向で決まるものであり、値下げ販売で一時的に下がった価格が将来も続くとは言い難い」と述べてこれを否定し、“精神的損害”について「公社は客観性を欠く資料に基づき値下げ販売の必要性を説明する等、交渉態度は誠実なものではなかった」としてこれを認めた。

その結果、公社には、1戸当たり慰謝料と弁護士費用の計110万円の支払が命じられた。

一部新聞はこれを「住民、逆転勝訴」と報じている。

しかし、冒頭で述べた原則は貫かれたと見るべきである、責められたのは公社の「交渉態度」でしかなかった。

震災にあった上に(結果的に)高いマンションを買わされてしまった原告には誠にお気の毒ではあるが、またしても誠に当たり前の結論であったと言うべきである。


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