BRIEFING.139(2007.05.17)

評価時点の相違と鑑定評価額の信頼性(1)

不動産の鑑定評価書に必ず記載される「時点」には、次の2つがある。

@価格時点(鑑定評価の基準となる年月日)
A評価時点(鑑定評価を行った年月日)

通常は両時点がほぼ同じ、またはAの方が若干後というのが、一般的であり、これを「現在時点の評価」と言う。

Aの方がかなり後(概ね6ヶ月以上後)の場合は「過去時点」、その逆(概ね1ヶ月以上先)の場合は「将来時点」の評価と言う。

ところで、鑑定評価に必要な事例(取引事例、賃貸事例等)の多くは、実際の取引や賃貸借があった後でないと収集できない。しかも通常、取引等の2〜6ヶ月後でないと分かってこない。

とすると、鑑定評価に利用する事例資料は、評価時点の2〜6ヶ月程度後のものということになる。確かにその時点から価格時点までの趨勢を判断してそれを価格や賃料に加味することでこの欠点を補ってはいる。しかしそこに誤りや読み違え、思いこみ、恣意等が介入する余地がある。

したがって、不動産鑑定評価の社会的責任を無視すれば、Aは@の6ヶ月以上後というのが好ましいということになる。

とすれば、@=Aという鑑定評価を、十分に事例資料の集まってから、すなわち@の6ヶ月ほど後にもう一度行えば、その方が信頼性が高いということになる。

確かに、バブル絶頂期〜崩壊直後の鑑定評価書には、今となってはあきれ返ってしまうようなものがある。Aが@の6ヶ月後なら、あるいは1年後なら、このような読み違いもなかったろうに、と思わざるを得ない。

しかしそれは後になって分かることであるから、不動産鑑定評価は、常に後日あきれ返られるおそれを抱えているのである。


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