BRIEFING.014(2001.12.10)

マンションの敷地の持分当たり単価(3)

前回(2)では、階層・位置・用途別効用比という流動的なものが敷地利用権割合(土地に対する権利の割合)に影響を及ぼすことの妥当性に疑問を投げかけた。それは両方起因説への疑問でもある。では、専有部分の床面積割合という安定的なものに依存して敷地利用権割合が決まる、建物起因説が優れていると言えるのであろうか。

しかし、面積・設備・内装等が全く同じ建物でありながら、存在する空間が異なるということだけのために生じている価格差を、すべて建物に押しつけてしまうこと(建物起因説)にも疑問が残る。むしろその価格差は建物以外のもの、すなわち土地によって生じている(土地起因説)とも考えられるではないか。

ところで、敷地利用権割合の原則はそもそも課税の便宜のために設けられたもので、土地に対する適正な権利の割合を示したものではないと解すれば、土地に対する適正な権利の割合は必要に応じてその都度別途検討すればよいことになる。規約による別段の定めも、それを定めた時点における適正な権利の割合にすぎないと考えればよい。土地単価の統一にこだわる必要もない。そもそも土地に対する適正な権利の割合は流動的なものなのである。

課税の公平上、敷地利用権割合と土地に対する適正な権利の割合を一致(すなわち単価統一)させておくことは必要であろう。しかし、土地に対する適正な権利の割合が流動的であるため、それに合わせて日々(少なくとも毎年)規約を改正して敷地利用権割合の変更を行わない限り、その実現は不可能である。

不動産の鑑定評価においては、区分所有建物及びその敷地の価格(すなわち1戸の価格)の内訳としての土地価格を、法または規約に定められた割合にこだわりなく査定する。それは土地に対する適正な権利の割合を追求しようとするためと考られる。そしてそれは結果的に両方起因説を支持していることになる。

では、土地に対する適正な権利の割合を求める(各戸へ配分する)方法とはどのようなものであろうか。また、区分所有建物にとって「土地に対する適正な権利の割合」というものが本当に存在しうるのであうか。合理的根拠を有し、われわれの感覚にも合致し、様々なケースに応用できる配分方法はないものであろうか。


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