BRIEFING.145(2007.07.19)

取引事例比較法における直接比準の活用を(1)

取引事例比較法は、不動産の価格を求める手法の1つで、近隣地域(対象不動産の存する地域)または同一需給圏内の類似地域から収集・選択した取引事例に係る取引価格から対象不動産の価格を求める手法である。

その適用方法には、次の2つがある。

T直接比準(下図の@→C)
U間接比準(下図の@→A→B→C)

 @事例不動産 → A事例地域
    ↓              ↓
 C対象不動産 ← B近隣地域

@→Aを標準化補正、A→Bを地域要因比較、B→Cを個別的要因比較と言う。

Uが3段階の比準を行うのに対し、Tは1回の比準で対象不動産の価格にたどり着くので、簡単なように思える。しかし実際やってみるとUの方が容易であることが分かる。

たとえば、異なる地域に存する角地の取引価格から比準して、対象不動産である旗竿地の価格を求めることは困難である。この場合、@角地であること、A地域が異なる(価格水準が異なる)こと、B旗竿地であること、の3つを分けて考えることにより比較がしやすくなる。

具体的には、@角地とその地域における標準画地価格(地域の地価水準)の比較、A両地域の価格水準の比較、B旗竿地とその地域の標準地価格(地域の地価水準)の比較、という比較を行うことになる。

おそらく、誰でも無意識のうちにこの3段階の比較を行っているのではないだろうか。

したがって、現在、Uの手法が一般的である。

しかし、対象不動産の最有効使用(BRIEFING.059参照)が、近隣地域における標準的使用と異なる場合には、逆にUは使いづらくTの方が使いやすい。

次回、その具体的な例を考えてみることとする。


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