BRIEFING.147(2007.08.02)

取引事例比較法における直接比準の活用を(3)

前回前々回で、以下の2つについて説明した。

T直接比準・・・・・・・・・・・・・個別的要因重視
U間接比準(3段階比準)・・地域要因重視

Uの主たる目的は、近隣地域の価格水準を求めることと言うべきであって、採用する取引事例は近隣地域の類似地域から収集するべきである。

そして、なるべく個別性の高くない事例を採用すべきである。

前回の分譲マンション用地の例で言えば、対象不動産が分譲マンション用地であることはとりあえず忘れ、近隣地域の類似地域から、その地域においてできるだけ標準的な画地の事例を収集することになる。

この場合、地域の類似性よりも対象不動産の類似性を重視して分譲マンション用地の事例を選択することは、不要であるばかりでなく、誤差を大きくする原因になる。標準化補正が難しくなってしまうからである。

一方、Tの目的は、対象不動産の価格のみを求めることと言うべきであって、採用する取引事例は地域の類似性にこだわらず、対象不動産との類似性に着目して収集するべきである。

前回の分譲マンション用地の例で言えば、近隣が工業地域か一戸建住宅地域かはとりあえず忘れ、マンション用地の事例を収集することになる。

さて、それぞれの欠点は次の通り。

T.地域の特性が異なれば、特定の不動産どうしの直接の価格の比較が難しい。
U.誤差が積み重なる可能性がある上、異なる用途の事例採用に違和感がある。

この両者の欠点を補う折衷法として、Uの形式をとりつつ対象不動産との類似性の高い事例を採用する、という方法が指摘されている。

確かにこれで前述の「違和感」は払拭される。しかし理論的には標準化補正が困難になり誤差が大きくなってしまうという欠点が生じ、理論的には首肯しかねると言わざるを得ない。


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