BRIEFING.148(2007.09.18)

借地権割合の正体は?

借地権とは、建物の所有を目的とした地上権または土地の賃借権を言う。借地権は、その地上建物とともに(まれに借地権のみで)売買され、地域によっては、その価格の、更地価格に対する割合(以下借地権割合という)の相場が形成されている。

しかし実際のところ、借地権の売買市場が十分に成熟している地域は多くない。

また、その売買価格が表に出てくることはまれで、出てきても建物とセットの価格である上、借地の残存期間、賃料、敷金、権利金、建物の条件(規模、堅固か非堅固か等)等が様々で、そこに規範性を見いだすことは極めて困難である。

さらに、このような客観的事情以外に、そもそも土地を貸すに至った事情、賃料改定の際の事情、契約更新時の事情等の主観的事情(両当事者間で認識が異なる場合も多い)も様々である。

このような見えにくい「市場」において語られる「相場」は、国税庁の定めた借地権割合を基礎としている場合が多い。これは、毎年公表される路線価図に記されているもので、路線(道路)毎に90%〜30%まで10%刻みで定められている。商業地域において高く、住宅地域において低い。

そしてこの定められた割合が指針となり、逆に現実の相場を誘導していると言える。これが借地権割合の正体と言ってもよいだろう。

なお、地上権でなく賃借権の場合、実際の借地権割合は、路線価図に記された数値よりも10%程度低いと言われる。なぜならば、土地の賃借権を譲渡する場合には地主の承諾が必要であり、その承諾には「譲渡承諾料」なるものが授受されるのが一般的であり、これを控除した結果と言われている。

ところで、愛知県のある地域には、「ここらでは昔から借地法は適用されない」という地区があるという。賃料の増減額や契約更新、増改築の承諾等についての借地人保護制度が適用されないという趣旨である。

とすれば、そこは借地権割合の極めて低い地域と考えられる。

ただ、興味深い地域ではあるが、法治国家においてこのようなことはないはずだ。

今日、路線価図の借地権割合は、一般に市場において受け入れられ、一定の秩序を形成したと評価できる。但し、前述の残存期間等の個別性による修正を忘れてはならない。


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