BRIEFING.150(2007.10.11)

建物の敷地の一部である土地の売買

ある地主が、その所有地に賃貸マンションを建て、竣工後にその敷地の一部を売却し、建築資金の回収に充てようとしたところ、その売却によって、そのマンションが容積オーバーの違法建築となってしまうことが判明した。

そこで地主は、これを提案したハウスメーカーと銀行とを訴えていたところ、このほど裁判所が両社の説明義務違反を認め、両社に数千万円の賠償を命じた。

詳細は把握していないが、違法行為を指南したとすればとんでもない話である。

さて、この容積率オーバーに気づいたのは誰であろうか。おそらく売却を依頼された仲介業者があれ?と思い、地主にマンションの建築確認申請書を見せてもらい、分かったのではないだろうか。

しかし、新築から何年も経ち、売却しようとする土地とマンション敷地のその他の部分との間に、塀でもあればどうだっただろうか。

売却しようとする土地にマンションが乗っていなければ、その土地はマンションの「底地」(BRIEFING.149参照)でないため、建物の登記簿にその土地の地番は一切登場せず、その土地の容積が隣のマンションに使われていることに思い至ることは少ないだろう。

用語の正確な定義を無視して言えば、建築基準法上の敷地であって、不動産登記法上の敷地ではない土地と言える。

では、この土地に建物を建てようと、建築確認申請を出せばどうなるであろうか。いわゆる「敷地の二重使用」である。

もちろん、申請を受理した特定行政庁が知っていて確認を下ろすことはないだろう。しかし、通常はそこまで調査はしないと言われる。

それどころか、二重使用を禁止すると、このような土地を善意で取得した人に不測の損害を及ぼすおそれがあるため、あえて放置すべきだとの考え方もある。

2つの法律の目的・性格が全く異なるのを承知で言えば、不動産登記法による建物登記簿に、建築基準法上の敷地を公示するといったことができないものだろうか。各分野の専門の先生方にご検討をお願いしたい。


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