BRIEFING.159(2008.02.07)
借地権を敷地とする建物の積算賃料
新規賃料を求める鑑定評価の手法の1つに積算法がある。この手法による試算価格を積算賃料と言い、それを求めるための基礎となる価格を「基礎価格」と言う。
「基礎価格」は対象不動産の有する経済価値を示す価格である。
そして、建物の賃貸借ではあっても、その「基礎価格」は、建物の価格だけではなくその敷地をも含めた価格となる。
民法上、土地・建物は別個の不動産ではあるものの、借家人は間接的にその敷地をも利用しているからである。
では、敷地が借地権である場合、敷地に係る「基礎価格」は借地権の価格とすべきであろうか。それとも、借家人にとっては敷地が借地権か否かはあまり関係のないことであるから、自用地の価格とすべきであろうか。
借地権の価格は、建物の規模・構造、地代の水準、一時金の額、残存期間等にもよるが、自用地の価格の30〜80%程度(BRIEFING.148参照)と考えられているから、その差は大きい。
しかし、借家人に影響が及ぶ定期借地権である場合を除き、借家人は全く気にしていないのが現実ではないだろうか。また賃貸市場においても考慮されていないだろう。
一方、地代と家賃との板挟みとなる建物所有者にとっては大変に重要なことである。ただ、敷地の地代が高いから家賃も上げてくれという話は通らない。それは、高く買った土地だから家賃も高くしてくれねば困る、という話と同じで、借家人に転嫁すべきことではないだろう。
ところで、地代水準の高い借地権は(将来、下方改定の見込みが高いとはいえ)価格が低く査定され、その結果、基礎価格も低く査定されてしまう。すると基礎価格から求められる純賃料相当額も低くなってしまう。そこに加算する必要諸経費等(地代他)が高いため、求められる積算賃料は、自用地の場合と変わらない水準となるだろうし、そうなるように借地権価格が形成されるはずである。
とすれば、敷地が借地権か否かは、建物の積算賃料の評価に影響を与えないこと(BRIEFING.136参照)になり、建物所有者にとっても、どちらでもよいことになる。
それならば自用地として基礎価格を求めた方が簡潔であるし、判断による誤差の発生も減らせる。
したがって、敷地が借地権である建物の積算賃料を求める場合の基礎価格は、敷地については自用地として査定すべきである。