BRIEFING.161(2008.03.18)
一戸建住宅の賃貸
一戸建住宅の人気は、都心回帰のマンションブームの中でも根強い。しかし一戸建を買って住む人は多くても、借りて住む人はほとんでいないだろう。借りたくても、納得できる家賃ののものがないからである。マンションなら納得できる家賃のものがあるのだが。
一方、賃貸目的(収益目的)で一戸建を取得するひともいないだろう。貸したくても納得できる家賃では貸せないからである。マンションなら賃貸目的で取得する人がいるのに。
したがって、一戸建の供給は分譲のみでなされ、マンションについては分譲・賃貸の両方で行われる。
これを表にまとめると次のようになる。
売 買 | 賃貸借 | ||
持家 | 貸家 | ||
一 戸 建 | ○ | × | × |
マンション | ○ | ○ | ○ |
一戸建の賃貸借が見られないのは、貸主(所有者)と借主の双方が妥協・納得し得る家賃(以下「均衡家賃」という)が存在しないからである。では、なぜそうなるのだろうか。
住宅の需要者は、価格その他の要因を考慮して一戸建かマンションかを選択するが、その際、マンションには「区分所有の制約」があることを考慮する。暮らし方、増改築、造園等の自由に対する制約である。
一方、持家か借家かの選択において、借家には「借家の制約」があることを考慮する。
ところが「区分所有の制約」は「借家の制約」と重複することが多く、マンションの場合、持家でも借家でも自由度に大差はないと考えられる。買って住んでも、借りて住んでも、効用に差がなければ、価格と家賃とのバランスがとれ、均衡家賃が生まれるだろう。
ところが一戸建の場合、持家か借家かで自由度に大きな差が生じる。すると、買って住むより、借りて住む方が効用が低いため、価格に対して家賃が低くなってしまい、均衡家賃が生まれないのである。
さらに、自由度以外に、一戸建の所有にはマンションの所有とは違う“夢”がある。一戸建を借りて住んでも意味がないのである。
なお、近年、一戸建の賃貸を事業として行う例が見られる。注目したい。