BRIEFING.163(2008.04.14)

サブプライム・ローン、借り手救済策

サブプライム・ローン・ショック(BRIEFING.155参照)は、表面化した当初の予測を大きく上回る影響を世界に与えた。関連損失は20兆円を越えたと言われ、IMFは損失額が97兆円に膨らむと試算していると言う。

一方、米国政府は借り手救済策を発表した。返済の滞った借り手の自宅の差し押さえを、最大30日間猶予するというものである。

さらにFRB(米国連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が「差し押さえを防ぐにはローン元本削減まで踏み込む必要がある」と発言し、その具体策も検討されているとのこと。

しかし、借り手にはありがたいものの、貸し手の抵抗も予想されるし、モラル・ハザードを招くであろうことは論を待たない。

ところで、貸し手の他に、住宅の売り主に負担を求める手はないだろうか。今の住宅価格が正常であるとすれば、売り主は不当な価格で販売し、過大な利益を得た訳で、実は価格に見合う価値がなかった、一種の瑕疵が隠れていたと解釈できないだろうか。

もちろん、賃料が後日改定されるものであるのに対し、価格は契約後に時価が変動しても改定されるものではない(BRIEFING.137参照)。日本では、賃料減額訴訟や、公団値下げ訴訟でその原則が再確認されたところである。

とすれば、引渡しも済んで数年経つというのに今更値下げでは平仄が合わない。

しかし、暴論を承知で言えば、貸し手又は売り主の負担により、ローンの支払いが可能なように購入価格を改定することが、今一番安上がりで世界を安心させることのできる方法かも知れない。


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