BRIEFING.164(2008.04.24)

不動産投資法人の信頼感・安心感の源

東証リート指数が低迷を続ける中、F投資法人の投資口価格が2月にストップ高となったことは記憶に新しい。大手M不動産がその投資法人の運用会社の買収を発表したからである。所有不動産に変わりはないのに、運用会社がM不動産の傘下に入ったことが好感されたのである。

ところで不動産投資法人は、所有する不動産やその信託受益権の運用業務を、運用会社に委託しなければならない。しかし、投資法人と運用会社のペアは必ずしも固定しておく必要はなく、むしろ運用力を競わせ、運用会社を変更してもかまわない。

だが現実には、投資法人の執行役員が運用会社の元役員であったり、現役役員であったりし、現役社長である場合も見受けられ、ペアは固定的である。

そして運用会社が固定的であれば、管理会社もその関連会社、不動産の取得先・売却先も関連会社といった具合である。

しかし不動産投資法人の投資口の価値はその法人の所有する不動産等そのものの価値に依存するものであり、投資法人はそこからの利益が最高となるよう、運用会社を選択してゆかねばならない。

とすれば、投資法人の執行役員と運用会社の社長とが資産運用報告書でにっこり笑って握手している図はいかがなものだろうか。

とは言うものの、運用会社が信頼しうる大手不動産会社の関連会社であれば、市場の評価は高く、下手に運用会社を変更するより、固定しておく方がよいかも知れない。少なくとも、今のJ−Reat市場は、投資法人・運用会社・管理会社・取引先、すべて同一の大手不動産会社グループ、というものに信頼感・安心感を認めているようだ。

実際、ポートフォリオを形成する個々の不動産の善し悪しを認識して投資する人は少なく、運用会社のグループの善し悪しで判断する人がほとんどではないだろうか。つまり、信頼感・安心感の源は、不動産そのものでなく、運用会社のグループにある。

とすればJ−Reatは、不動産そのものに投資すると言うより、不動産会社に投資するものと言えよう。

さて、執行役員が運用会社の社長を兼職しているある不動産投資法人の資産運用報告書には「兼職のメリットとデメリットの回避」について記されている。

そのデメリットとしては、職責混同、利益相反行為、監視機能の低下等があげられている。そしてこれを回避するため「監督役員による執行役員の監督の徹底」「利益相反対策ルールの制定」等が図られていることが記されている。

そうしなければならないデメリットがあることを忘れてはならない。 


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