BRIEFING.165(2008.05.01)

2つの事業用定期借地権

事業用定期借地権の設定期間が「10年以上20年以内」から「10年以上50年未満」に改正され施行された(平成20年1月1日)。

しかしこのうち「10年以上30年未満」の場合と「30年以上50年未満」の場合とで規定に微妙な違いがあることはあまり知られていない。簡単に言うと次の通り。

●30年以上50年未満の事業用(23条1項)
 普通借地権の設定が可能な期間であるが、普通借地に当然認められる一定の借主保護規定を排除することが可能(特約必要)。

●10年以上30年未満の事業用(23条2項)
 そもそも普通借地権はあり得ない期間であるから、3〜8条、13条、18条の借主保護規定を適用しない(特約不要)。

これまでの要領で1項の事業用借地権を設定することのないよう留意されたい。

    新     旧
22条
 
定期借地権 22条
 
定期借地権
 50年以上  50年以上
23条

 
事業用定期借地権等 23条

 
建物譲渡特約付借地権
 30年以上50年未満(1項)
 10年以上30年未満(2項)
 30年以上
 
24条
 
建物譲渡特約付借地権 24条
 
事業用借地権
 30年以上  10年以上20年以下

新旧を対照すると上表の通り。23条と24条の中身が逆転した上、何ともややこしい規定ぶりである。

そもそも従来から22条のみを「定期借地権」とし、旧23条を「定期」の付かない「建物譲渡特約付借地権」とし、旧24条も「定期」なしの「事業用借地権」としたところから気持ちの悪さがあった。

この3つを「定期借地権」と総称し、それぞれ「普通定期−」「建物譲渡特約付定期−」「事業用定期−」としていればスッキリしたし、実際このように理解している人も多い。

今回、24条(旧23条)は相変わらず「定期」なしで、23条(旧24条)は「事業用定期借地権等」とされ「定期」が付いた。加えて「等」まで付いた。

「等」の意図は明らかでないが、1項が「事業用定期借地権」(新たなタイプ)であり、2項が「事業用借地権」(旧法のものと同じ)であり、この2つを「事業用定期借地権等」としたのかと思料するがはたしてどうだろうか。

いずれにしても気持ちの悪さが増したことは間違いない。


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