BRIEFING.166(2008.05.08)

買うでもなし、借りるでもなし「地価連動型住宅ローン」

住宅を買うことは、勤労者にとってひとつの夢である。しかし、実は年収の数倍もの借り入れをして不動産を購入することは、過剰な不動産投資に等しい。不動産の時価が上昇すればよいが、下がればたちまち買主は債務超過に陥る。

一方、賃貸住宅に住む人は、不動産の価格変動リスクを回避できる。不動産価格や物価が上がると賃料も(遅行するとはいえ)連動するので面白くないが、下がった場合にも賃料が連動してくれるので涼しい顔をしていられる。

では、両者の中間型は考えられないだろうか。買うでもなし、借りるでもなし「地価連動型住宅ローン」のようなものである。

たとえば、土地建物の土地部分について、毎年時価を見直し、その変動率によってローン残高を改定する。変動率の半分だけを反映させてもいい。

貸し手である金融機関は、地価変動のリスクを負うが、証券化でそれを回避できるのではないか。住宅の売主にそれを強制的に引き受けさせるしくみにしてもいい。

金融機関に地価下落のリスクを負担させるという性格はノンリコース・ローンに似ているが、デフォルトしたら負担するというものではなく、それに至らぬうちに両者の利益を調整するという機能をもつ点で意義がある。

また、地価の先安感がある時でも住宅の需要を喚起でき、また、先高感がある時には過剰な需要を冷ますという作用もある。

ところで平成15年頃、旧・住宅金融公庫が「物価連動型住宅ロ−ン」を検討していた(BRIEFING.048参照)ことはあまり知られていない。その後、続報を聞かないが、物価よりも地価に連動させる方向で再検討できないものだろうか。

さて、この「地価連動型住宅ローン」案には、クリアすべき次の問題点がある。

@土地建物の価格配分が適正にできるか。
A土地の時価を毎年適正に査定できるか。

今後、不動産鑑定評価にその役割が期待される。


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