BRIEFING.170(2008.07.02)

不動産投資信託の投資口価格と鑑定評価額

不動産投資信託の投資口価格の低迷が続いている。

外資が撤退したため、銀行の貸し渋りのため、などと言われており、一時の勢いはは全くない。

不動産投信の投資口価格を株価ととらえた時のPBR(株価の純資産倍率)は、上場されている42銘柄のうち、9割ほどの銘柄で1を下回っているという。

それは、保有する不動産の時価(この場合は直近の鑑定評価額)総額から、負債を控除した額が、投資口の時価総額を上回っているということであり、簡単に言うと、所有する不動産すべてを売却してその代金を投資家に返した方がよい、ということである。

解散価値割れである。

それでも積極的な買いが入らないのであるから、下がりすぎと言えよう。

しかし、それは不動産の鑑定評価額を基準に見た場合の考え方であり、逆に投資口価格を基準に見た場合は、鑑定評価額が高すぎる、ということになる。

市場における投資口価格こそが不動産の時価だということもできるのだ。

鑑定評価額が投資口価格を導くのか、投資口価格が鑑定評価額を導くのか、悩ましい問題である。

ただ、投資口価格が、直近の分配金や一般の金利水準に左右されるのに対し、鑑定評価額は、組み込まれている個々の不動産について長期的かつ具体的に検討して求められている。視点が異なるため、どちらが正しいと言えるようなものではない。

したがって両者は相互に影響を及ぼし合い、補完し合うべきものと考えられる。

なお、投資法人が不動産を取得・保有するに際しての鑑定評価で求めるべき価格は「特定価格」の1つ「投資採算価格」と呼ばれる価格で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格で、一般的な「正常価格」とは若干の違いがある。


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