BRIEFING.172(2008.07.29)

不動産の証券化における「スポンサー」って?

不動産の証券化には様々な個人・法人が関与する。これらは「プレイヤー」と呼ばれ、それぞれの資力や専門性を生かした役割を担っている。たとえば、次のような者である。

@オリジネーター(原資産所有者): 証券化する不動産の所有者。
A投資法人: SPV。証券の発行体。資産の“入れ物”。
Bレンダー: 投資法人に対する資金の貸し手。銀行等。
C資産運用会社: 投資法人からアセット・マネジメントを委託された会社。
D資産管理会社: 投資法人からプロパティー・マネジメントを委託された会社。
E投資家・投資主: 投資法人の発行する証券を購入・保有する者。

この他、会計監査人(監査法人)、格付会社、一般事務受託会社、資産保管会社(信託銀行)、引受人(証券会社)、弁護士、不動産鑑定業者などが関与する。

これらに加え、ここ1〜2年の内に「スポンサー」なるものが“登場”した。誰がいつからこの名称を使い出したか定かではないが、その指し示すものは、主なオリジネーター(またはその親会社)、兼投資法人の筆頭投資主、兼資産運用会社の親会社、兼資産管理会社の親会社、兼投資法人の役員出身会社、といったところか。

上記Bを除く@〜Eに非常に関連が強く、全く関連がないのはレンダーのみということになる。極端に言えば「スポンサー」が融資を受けるためのしくみと言えなくもない。

かっこ書きで「設立母体」と付されることもあるが、当を得た説明である。

確か、証券化という言葉が耳慣れなかった頃、「スポンサー」などという言い方はなかったと記憶している。少なくとも証券化の教科書的な本には登場していなかったはずだ。

それどころか「スポンサー」的なものの登場は、利益相反の観点から好ましくなく、さらには倒産隔離すら危うくするからである。

ア.投資法人の信頼≒投資法人の所有する不動産(またはその信託受益権)の信頼
イ.投資法人の信頼≒「スポンサー」の信頼

今、市場も銀行もアではなく、イと判断している。個々の不動産の詳細を把握することが困難である以上、妥当な判断なのであろうか。


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