BRIEFING.178(2008.10.23)

効用積数とは?(2)

不動産鑑定評価基準では、効用積数を使って「区分所有建物及びその敷地」の積算価格を求める方法として、次の2つを示している。

(イ)まず階層別効用積数の割合を求め、さらにその階層の中での位置別効用積数の割合を求め、これらを1棟の建物・敷地全体の積算価格に乗ずる。

(ロ)敷地価格については上記(イ)と同様とし、建物価格については専有面積割合等を乗じ、両価格を合計する。

(イ)は土地建物いっしょに、(ロ)は土地のみについて効用比を認識し建物についてはすべて100という考え方である。位置別・階層別の価格の相違が土地建物いずれの価格に起因するのかという論点にも関係する(BRIEFING.012013014参照)。

一方、前回例示した方法では、土地建物いっしょである上、階層別・位置別の効用比も同時に査定し、さらに、用途・規模も同時に考慮している。

これらを整理すれば次表の通りとなる。前回例示の方法は「一括総合方式」とでも呼ぼう。

  要因個別考慮 要因総合考慮
土地建物一括  上記(イ)   前回例示
土地建物別々    
  建物一律(土地起因説)  上記(ロ)  
土地一律(建物起因説)    

それぞれの空白部分の方法もあり得る。

なお、建物または土地一律方式では、超高層マンションの最上階や低層階において、積算価格内訳が土地または建物に著しく偏ってしまうという欠点がある。

一括総合方式は、どんぶり勘定と言えなくもないが、(イ)(ロ)と比べて“効用比”をイメージしやすいと思うのだがいかがだろうか。一度(イ)(ロ)の方法で前回の例を考えてみてほしい。

実務上も、一括総合方式が多いのではないだろうか。

ところで、効用積数を用いた積算価格の査定は、1棟の建物及びその敷地内におけるバランスを重視した方法である。したがって他の建物及びその敷地との均衡を見落としがちになる。特に用途が多岐にわたる場合、求められた積算価格が、近隣地域等における同用途の他の建物及びその敷地の一連の価格秩序の中にあるかどうか、検証を怠ってはならない。


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