BRIEFING.179(2008.11.06)

建築費の上昇が地価に及ぼす影響−土地残余法による試算

建築費の高止まりは不動産の価格にも様々な影響を及ぼす。

すでに存在する建物については、同種の新築建物に比して有利な賃料設定が可能となるし、同種の新築建物の供給が抑えられるため、その価格は上昇すると考えられる。

では土地についてはどうか。

土地の収益価格は、一般に収益還元法の1つ「土地残余法」により求められる。

対象不動産上に最有効使用の賃貸用建物を想定し、それに予想される純収益から建物に帰属する部分を控除し、その残余の部分を還元利回りで還元して収益価格を求める手法である。

建物に帰属する部分を先取りする訳であるから、建築費の大小が土地の収益価格に及ぼす影響は大きい。

ここでは1,000uの土地(基準容積率400%)に下図のような鉄骨造5階建て賃貸事務所ビルを想定し、建築費を変化させて収益価格を試算する。

5F:800u×有効80%×3,000円/月u
4F:800u×有効80%×3,000円/月u
3F:800u×有効80%×3,000円/月u
2F:800u×有効80%×3,000円/月u
1F:800u×有効70%×5,000円/月u

延面積4,000u、賃料合計は125,760,000円/年となる。

設計監理料は建築費の5%、耐用年数は躯体(70%)45年・設備(30%)15年、還元利回り4.5%(基本利率5.0%−賃料上昇率0.5%)とし、その他の条件、計算過程は省略し、次に結果のみ記載する。位は千円/u。下段は指数。

建物建築費
 
千円/u 200 250 300 350
指数 100 125 150 175
土地収益価格
 
千円/u 856 590 323 57
指数 100 69 38  7

建築費の上昇の程度を凌いで土地の収益価格は下落することが判る。

ただ、建築費の上昇が物価の上昇、ひいては賃料水準の上昇期待につながるとすれば還元利回りが低下し、その程度によっては、結論が変わる可能性もある。


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