BRIEFING.180(2008.11.17)
還元利回りの上昇が地価に及ぼす影響−土地残余法による試算
前回(BRIEFING.179)、建築費の上昇が土地の収益価格を大きく下落させることを試算した。今回は、同じモデルを使って土地の還元利回りの上昇が土地の収益価格に及ぼす影響を見てみる。
床面積、有効率、賃料単価等は前回と同じく下表の通り。延面積4,000u、賃料合計は125,760,000円/年である。
5F:800u×有効80%×3,000円/月u |
4F:800u×有効80%×3,000円/月u |
3F:800u×有効80%×3,000円/月u |
2F:800u×有効80%×3,000円/月u |
1F:800u×有効70%×5,000円/月u |
建築費は25万円/u、設計監理料はその5%、耐用年数は躯体(70%)45年・設備(30%)15年とし、その他の条件、計算過程は省略し、次に結果のみ記載する。
還元利回り(%) | 4.0 | 4.5 | 5.0 | 5.5 |
収益価格(千円/u) | 718 | 590 | 481 | 387 |
還元利回りの査定は、かなりざっくりしたものだが、それが土地の収益価格に大きな影響を及ぼすことが判る。
還元利回りには、賃料水準の上昇・下落への期待や見込みが織り込まれる。そのため社会の動きや趨勢に敏感に反応すると考えられる。
収益還元法は理論的で安定的、取引事例比較法はバブルの原因・・・。バブル崩壊後は一般にこうした考えが広まり、不動産鑑定士の中にもそれが先進的と捉える人々が現れたことは記憶に新しい。
しかし取引事例比較法が実証的であるのに対し、収益還元法が想定の積み重ねであるという欠点をかかえていることを忘れてはならない。