BRIEFING.181(2008.11.27)

定期建物賃貸借における賃料増減額請求権の放棄(1)

通常の建物賃貸借では、一定の場合「契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」(借地借家法第32条第1項)。但し「一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」とされている。

これは同法第37条に定める強行規定ではないものの、この但書に反する特約は許されず、不増額特約は無効、不減額特約は有効と理解されている。

一方、これらの規定は定期建物賃貸借の場合、「借賃の改定に係る特約がある場合には適用しない。」(同法第38条第7項)とされ、不増額特約も不減額特約も有効と理解されている。

一般にこの特約は「相互に賃料増減額請求権を放棄する。」といった文言で契約書に記載されることが多い。

もちろん不増額のみの特約も有効である。

また、不減額のみの特約も、賃借人には不利だが有効と解すべきだろう。

さて、通常の建物賃貸借の最長期間が民法第604条により20年に限定されているところ、定期建物賃貸借の場合、この民法の規定を排除し20年を越える約定が可能(借地借家法第29条第2項)とされている。

しかしたとえば40年間賃料を変動しないというのはいかがなものだろうか。両当事者が望んでそうしたとは言うものの両者予想もせぬ事態が生じた場合はどうだろうか。

インフレ・デフレで貨幣価値が大きく変わっても、名目賃料を据え置けば、実質的には賃料水準は、一連の価格秩序の中で大きくありどころを変えることになる。

場合によっては、激しいインフレで固定資産税等が賃料を上回ることになるかもしれない。

逆にデフレで、年間の賃料でその土地建物が買えるという時代がくるかも知れない。

ただ、通常の建物賃貸借ではなく、定期であるため、期間満了でリセットされるのが救いである。


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