BRIEFING.183(2008.12.11)

永久還元における“趨勢”の織り込み方

不動産の価格を求める手法の1つ、収益還元法には、永久還元を行う直接還元法と、有期還元と永久還元とを組み合わせたDCF法とがある。

永久還元式は(純収益÷還元利回り)で表されるが、採用した純収益が永久に続くものでないことは言うまでもなく、建物の老朽化、地域の賃料水準、物価や金利といった要因からの影響を受け、変動してゆく。

そこでこれらの“趨勢”を予測し、この式の中に織り込まなくてはならない。

ではそれを純収益に織り込む(純収益説)のか、還元利回りに織り込む(還元利回り説)のかが問題となる。

思うに、これから永久に変動を続ける純収益について標準的な数値が把握できるであろうか。遠い将来の純収益ほど、今の収益価格に及ぼす影響が小さいということも念頭に置きつつ判断しなければならない。そんなものがイメージできるであろうか。

それに比べ、還元利回りには、相場のようなものがある程度形成されているように思える。例えば都心の新築大規模オフィスビルならこれくらいとか、地方都市の築10年のアパートだとこれくらい、といった具合である。

その結果、その相場のようなものに、近隣地域の地域要因、対象不動産の個別的要因等を加味し、還元利回りをイメージし易いように思うのだがいかがだろうか。

また、純収益にも一部織り込み、還元利回りにも一部織り込み(折衷説)、では、複数の人が求めた収益価格の査定過程の比較が困難になるが、現実の純収益(または想定の直近の純収益)には主観やさじ加減を極力排除し、主観の混入の避けられない“趨勢”を、還元利回りにのみ織り込めむことにより、比較が容易になる。

しかし、直近の年度に多額の権利金を得たとか、多額の修繕費(キャッシュフローに直接影響)を支出したとかで、純収益が異状値を示す場合もでてこよう。そうすると、やはりこれらの要素を取り除き、この先数年間の標準的な純収益を査定して採用すべきとなる。

そして還元利回りには、その先の長期的または超長期的趨勢のみを織り込むこととなる。

前述の“比較困難”の問題は生ずるが、採用した標準的純収益が、この先何年間のものか、現実の純収益との相違は何か、を明示することにより、ある程度解決できるのではないか。そして、その年数が統一できれば、比較が容易となろう。


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