BRIEFING.187(2009.01.19)
後日のセカンド・オピニオン
不動産鑑定評価書の妥当性に疑問や不安、補強の必要などがある場合、その作成者以外の不動産鑑定士に、セカンド・オピニオンが求められる場合がある。それを求められた不動産鑑定士は、理由を付して「概ね妥当」「不適切」などの意見を表明することとなる。
しかし、表明した意見が「不適切」であった場合でも、先の不動産鑑定評価が不当だったと判断したとは限らない。
なぜなら、同一の不動産の同一時点の価格であっても、鑑定評価を行った日(鑑定評価額を決定した日)が異なれば、判断に違いが生ずる場合があるからである。
後からの方が、新たな情報、新たな事実を織り込むことができるからだ。
価格時点前後の取引事例が収集されてくるのは、価格時点が経過してしばらくしてから(BRIEFING.171参照)であるし、その後の収益見通しも、時が経つほどに見えてくるはずである(BRIEFING.139、140参照)。
たとえば、次の通り、同一時点Bの評価を@とAで行った場合、収益見通しに大きな差が生じてもおかしくない。
@H20年9月10日・・・鑑定評価A
AH20年9月15日・・・リーマンショック
BH20年9月20日・・・価格時点
CH20年9月30日・・・鑑定評価B
Aが大規模な災害やテロであっても同様だろう。
さらに1年後に見直せば、価格時点における価格水準を、時系列的に俯瞰することができ、かつての鑑定評価の見込み違いに気づくことも多いだろう。
「あの時点においては仕方なかったから妥当」、しかし「今になってみれば不適切」という判断がありうると考えるべきである。
とすれば、不動産鑑定評価額は、(1)特定の不動産の、(2)特定の時点における、(3)特定の時点において判断した価格ということになる。