BRIEFING.188(2009.01.26)

土地等の「先行取得」による買換えの特例

事業用資産の譲渡益に対する課税の繰延べ制度には、様々な特例が用意されているが、その中でも最も使い勝手がよいものとして、長期所有の土地建物等から土地建物等への買換え特例(租特法37条16号及び35条の7・17号)がある。

この特例は、昨年末で期限切れの予定であったが、その3年間延長が、政府及び与党の21年度税制改正大綱に盛り込まれている。

この特例の適用を受けるには、事業用の一定の土地建物等を譲渡し、原則としてその譲渡をした日の属する年の前年から翌年末までの間に、一定の要件に該当する土地建物等を取得する必要がある。

これにより、譲渡益の80%相当について課税が繰延べられる。

ところで両大綱には、これとは別に「平成21年及び22年に土地等の先行取得をした場合の課税の特例の創設」がある。

事業者がこの期間に土地等を所得し、この特例を受ける旨の届出をした上で、翌年度以降10年間のうちに、他の土地等を譲渡した場合、譲渡益の80%相当(22年取得の場合は60%)について課税が繰延べられる。

延長される特例では、取得を、譲渡の年を挟む計3年間の間に行う必要があるため、その間、土地等に対する需要と供給は、バランスがとれると考えられる。

それに対し新設の特例は、必ず先に土地等を取得し、翌年度から10年間のうちに、他の土地等を譲渡することになるため、需要を先に喚起し、その後10年間で徐々に供給も促進するという結果になる。

需要の先食いとなるが、差し当たっての経済効果は期待できる、注目すべき制度である。

不動産協会や日本ビルヂング協会連合会が期限切れ特例の延長を、税制改正要望に取上げていたものの、今回新設の特例のようなものに言及していなかったのは残念である。

1月23日には「平成21年度税制改正の要綱」として閣議決定され、「所得税法等の一部を改正する法律案」として国会へ提出されている。


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