BRIEFING.189(2009.02.05)

WTCで明らかにされるか?−不動産鑑定評価の「公平妥当」

大阪市の第三セクター「大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)」は、大阪市の臨海部に社名と同じ名前の超高層ビルを有する。しかし市の中心部から遠い上、オフィス需要の低迷で多くの空室を抱え、さらに、主なテナントである市から賃料値下げを迫られ、先般、昨年4月に遡っての値下げを飲まされたところである。

一方、庁舎の老朽化に悩む大阪府は、このビルを安く買取り、府庁の移転(職員の過半は反対らしいが)を検討中で、市とも協議中である。

さて、問題となる価格については、双方が鑑定評価を実施し、それぞれに153億円、95億円という価格を出している。

市(売主)、府(買主)のどちらがどちらの価格を出したかは言うまでもない。

不動産の鑑定評価は「不動産の価格に関する専門家の判断であり、意見である」(不動産鑑定評価基準・総論第1章三)から、同一時点の同一不動産の価格であっても、複数の「判断・意見」があってもおかしくはない。むしろぴったり一致する方が不自然である。

しかしこの大差はどうだろう。

また不動産鑑定士には「いかなる理由にかかわらず、公平妥当な態度を保持すること」(同基準・総論第1章四)が求められている。

だが、どちらがどちらの価格を出したか、大方予測がつくということは、この「公平妥当」を多くの人が信用していないということに他ならない(BRIEFING.051133187参照)。

府側は収益価格で査定、市側は収益価格に積算価格を勘案して査定し、その収益価格自体にも差があったという説明はあったが、府民・市民が納得できるものではない。

府知事の打診を受け入れた市長は、府市共同で再度鑑定評価を実施する意向を明らかにし、さらに「それぞれの評価条件を明らかにした上で再鑑定の条件も明らかにしたい」と述べたという。

「それぞれの評価条件」が明らかにされ、「何だ、それならこの大差も納得できるな」という結果に落ち着くことを信じたい。


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