BRIEFING.192(2009.03.05)

永久還元における減価償却費についての提案

収益還元法における減価償却費については、これまでにもBRIEFING.042043056057092、で述べてきたところであるが、ここでは「建物及びその敷地」の収益還元(永久還元)法適用に際しての減価償却費の算定方法について新たな提案を行う。

かつての収益還元法では、償却後の純収益及びそれに対応する還元利回りを基礎とするのが一般的であった。しかし近年では、償却前の純収益及びそれに対応する還元利回りが、投資判断の目安とされることが多いため、これを基礎とする方が一般的となっている。

この変化は、一般の投資家の目線を意識したものではあるが、費用項目の1つを還元利回りに織り込んでしまうという“どんぶり勘定”的色合いを強めたという欠点もある。

一方、かつての減価償却費は、企業会計上の減価償却費との混同があったのか、建物の残存耐用年数にかかわらず一定(正確には再調達原価に連動)というおかしな考え方があった。

その結果、新築時なら問題ないが、築年数が経過してくれば、やはり残存耐用年数を還元利回りに織り込まなければならず、結局は“どんぶり勘定”化してしまったのである。

また、耐用年数経過後はどう考えればよいのかという未解決の問題も抱えていた。

残存耐用年数を躯体・設備に分けて査定した場合に、躯体はまだ期間を残しており、設備は期間満了というとき、躯体の減価償却費のみを計上する、といった妙な手法も散見された。

そこで、減価償却費を建物建替え(立退き料、取壊し費用、期間の費用含む)の費用の積立と捉え、それを積み立ててゆくことを考えればよい。

あと1年で建てかえるなら、この1年でその費用を見込む。あと10年なら今後10年間でその費用を見込めばよい。

新築なら40〜50年間でこの費用を見込めばよく、かつて採用された手法(新築時には有効)とほぼ同じことになる。

しかしこの手法にも、建替えによる賃料アップが反映されないという欠点がある。とすれば、やはり還元利回りというブラック・ボックスにこれを織り込むことになり、“どんぶり勘定”化は避けられないのだろうか。


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