BRIEFING.196(2009.04.16)

「かんぽの宿」は再評価より再入札を

日本郵政が「かんぽの宿」の売却を取り下げた後、総務省はこれらの施設について独自の評価を行った。

その結果求められた価格は、日本郵政が当初予定していた譲渡額の1.7倍だったという。

但し調査対象は黒字の施設だけのつまみ食いであった上、従業員の雇用継続を前提としていない点で両金額の比較はできない。

比較できない評価額をどうしを比べて何倍だと言っても無意味である。入札が不透明だった上に評価まで不透明だったと言わざるを得ない。

さて、いくらお金をかけて豪華な施設を建てても、それが場違いなものであったり、あるいは使い勝手の悪いものであっならば、そこから利益が上がらず、その評価額は投じた金額を大きく下回ることになる(BRIEFING.190191参照)、ということは以前にも述べたところである。

しかし場違いかどうか(地域に適合しているか)、使い勝手がよいかどうか(土地建物が均衡しているか)の判断はなかなか難しいものである。

悪いと思われていても、ちょっと手を加えたり、経営の仕方を変えたりすれば、大きく収支が改善することもあろう。

それが可能かどうかの判断は“評価”という手法で明らかにすることは難しいだろう。学者や評論家に判断させるべきものでもない。不動産鑑定士に委ねることでもない。

答えを出せるのは、現にそれに出資しようとする投資家であろう。出資者としての責任を引き受けずして答えらしきものを出しても答えとは言えまい。

評価額は、現実の応札価格や売買価格の前には謙虚であるべきだ。

したがって、入札に疑義があったからといって、再評価をしても(仮にそれが同条件で行われたとしても)あまり意味はない。同条件で再入札をしてこそ、予定していた売却価格の是非が明らかになるのである。

但し、どうせ再入札をするのなら、物件を地域ごとにグループ分けする等、条件の変更を行い、少しでも高く売るといった現実的解決を目指すべきである。けんかの決着に興味はない。


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