BRIEFING.197(2009.04.23)

土地利用形態の逆戻り

都市の土地利用計形態の変遷を長い目で俯瞰してみると、概ね次の様な流れが認められる。

○林地→農地→宅地(住宅地・商業地・工業地)
○住宅地→商業地
○低層住宅地→高層住宅地

しかし近年では、大規模オフィスビル跡地や百貨店の跡地にマンションが建てられた事例がある。大規模な工場跡地が区画割りされて一戸建て住宅地になった事例も見られる。

また、耕作放棄され、森林や原野になってしまい、復元不可能な元・農地が全国に135,000haもある(農水省調べ)という。

これまでとは逆の流れである。

さらに驚くことに、市街地で農業を始める例もある。但し多くは、建物の中で行う野菜の水耕栽培が主であるから、畑というよりは工場と理解すべきで、宅地が農地に逆戻りしたとまでは言えない。

大都会のビルの屋上を菜園にしたり、地下室に田圃を作ったりという話もあるが、話題作りの域を出ない。

また先日は、大阪市内の3階建ビルで大麻草を多量に栽培していた男が逮捕されたというとんでもないニュースもあった。

しかし、京都のあるホテルは、レストランで使う野菜の栽培を、所有する遊休地で試みている。水耕栽培とは言え、ビニールハウスでトマトを栽培するというから、これは工場ではなく、畑の概念に近いだろう。

まだ実験段階とはいえ、宅地が農地に戻った事例と言えるのではないだろうか。

この試みをホテルと共同で行っている京都大学の森本教授は「コインパーキングに限られる都市部の遊休地の有効な活用方法として検討したい」(日経新聞)と語っておられる。

コインパーキングに優る収益が上がることを期待したい。

ところで、この農地は農地法上の農地だろうか、不動産登記法上の地目はどうなるのか、地方税法上(固定資産税)あるいは相続税法上はどうだろうか。

今後の扱いに注目したい。


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