BRIEFING.201(2009.06.26)

不動産の鑑定評価額と低価法における正味売却価格

不動産会社が所有するマンション開発素地は、棚卸資産である販売用不動産であるから、低価法の適用が強制される。

すなわち、販売用不動産の期末における正味売却価格が、取得原価よりも下落している場合には、正味売却価格をもって貸借対照表価格としなければならない。

そして、日本公認会計士協会の「販売用不動産等の評価に関する監査上の取り扱い」によれば、次の通りである。

@販売用不動産の正味売却価格
=販売見込額−販売経費等見込額

A開発事業等支出金の正味売却価格
=完成後販売見込額−(造成・建築工事原価今後発生見込額+販売経費等見込額)

さらに、販売見込額の基礎となる土地の時価として、「不動産鑑定士による鑑定評価額」が例示されている。

ところで、マンション素地の鑑定評価には、取引事例比較法、収益還元法(土地残余法)、及び分譲マンションを想定した開発法が採用されるのが普通である。

このうち、取引事例比較法と収益還元法は、対象不動産を現金化するコストを考慮していない。一方、開発法は、販売費を考慮し、最終的に回収する現金を評価額としている。

これらによる3価格を調整して求められた鑑定評価額に、現金化コストが考慮されているか否かは曖昧であり、上記販売見込額としてこれを採用すると、正味売却価格を求めるに際し、販売経費等見込額を丸々控除すべきか否か、判断に迷うところである。

これは、開発法が、現金化までを想定しているのに、他の手法が、不動産のままの価値を把握しており、それらを同列に扱っているために生ずる問題である。

ならば開発法においては土地の販売費を考慮せず、想定建物の販売費のみ見ておけばよいということになるが、どうも中途半端である。

いずれにせよ、開発法による価格が、比準価格や収益価格と若干趣を異にしていることを理解しておかねばならない。


BRIEFING目次へ戻る