BRIEFING.202(2009.07.06)

住宅に「残価設定型ローン」は無理か?

車を購入する場合、あらかじめその価格の一定割合を残価(一定年数後の下取り価格)として設定し、残りの代金のみをローンで支払うしくみがある。これを「残価設定型ローン」と言い、国内各メーカーのディーラーが扱っている。

期間は、3年、4年、5年と選択でき、延長も可能と言う。

また、残りの代金を一括払いする「残価設定型一括払い」のプランも一部にある。

通常の購入とどちらが得かは、残価率、金利、その他の条件を詳細に検討しなければ分からないが、とりあえずの支払が楽になることは間違いない。

では、住宅にも「残価設定型」ができないものか。

たとえばデベロッパーからマンションを購入するに際し、10年後の買戻し価格を残価として保証してもらい、その残りの代金のみを支払う(ローンまたは一括)。買主にはその間、善管注意義務を課す。

新婚でマンションを買えば、10年で子供部屋も必要となるであろうから、ちょうど買換え時かも知れない。しかし買換えと言っても、売却代金はすでに購入時に差引かれているから、現金が返って来るわけではない。

したがって、マンションの値上がりを期待する人には、面白くないしくみであり、値下がりを心配する人にはありがたい制度となろう。

そうしてみると、維持管理修繕費、固定資産税の負担者が異なるだけで、結局は10年間の定期建物賃貸借と変わらないということになる。

さらに、不動産取得税、登録免許税等の負担を考えれば、賃貸借の方が合理的だ。

動産の世界では、この「残価設定型」やファイナンス・リースといった形で賃貸と売買の境界があいまいになりつつある。不動産の世界では、借地借家法や前述の流通諸税がこれを阻んでいるのではないだろうか。


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