BRIEFING.203(2009.07.13)

スライド法の変動率査定と業種の考慮(1)

継続賃料を求める鑑定評価の手法の1つにスライド法がある。

スライド法は、現行賃料を定めた時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に、価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。

この「変動率」は、両時点間の経済情勢等の変化に即応する変動分を表すものであり、土地及び建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数等を総合的に勘案して求められる。

この場合、一般的要因、近隣地域の地域要因、対象不動産の個別的要因を踏まえて前述の指数等を勘案すべきことは言うまでもないが、賃借建物の用途、業種、さらには当事者の個人的事情をも考慮すべきであろうか。

建物の賃貸借において、たとえば次のようなことが想定される。

@用途・・・・・・・・・住居、店舗、事務所、工場、倉庫
A業種・・・・・・・・・自動車部品工場、理髪店、居酒屋
B当事者の事情・・決算対策、盗難、入院、事業で失敗

まず@について考える。

共同住宅の一室を事務所として、店舗として使うべき建物を工場として、あるいは事務所として使うべき建物を倉庫として、それぞれ使用している場合、その純賃料の「変動率」は本来の用途を基礎として査定すべきだろうか、現実の用途を基礎として査定すべきだろうか。

思うに賃貸借契約においては用途が定めてあるのが普通であり、仮に定めていなくても賃借人がたやすく用途を変更することはできない。とすれば、現実の用途を前提として「変動率」査定すべきであろう。

とは言うものの、店舗用建物でいつまでも工場としての賃料で操業を続けられてはかなわない、と言うのが賃貸人の立場であり、地域の考えでもあろう。

ではAについてはどうか。Bについてはどうか。次回に検討する。


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