BRIEFING.205(2009.08.10)

筆界確認の憂鬱

土地を売却しようとする場合、契約から取引までの間に、売主が土地の実測をしなければならない場合が多い。

これは、売買契約で単価のみ定め、総額は(実測面積×単価)で決めましょうという趣旨の契約で、実測取引と言われる。売主は決済までに専門家に依頼して実測を行わなくてはならない。

売主にとって、費用のことはさておき、通常の宅地なら、実測そのものは簡単なものである。だが、実測の基礎となる筆界がはっきりしていない場合、面倒である。

筆界は、一筆一筆の土地の境であり、隣地所有者との間でその認識が一致しておればよいのであるが、僅かでも相違があれば、何とかして一致させなけらばならない。

ところが、タイムリミットのある売主と、全く急がない隣地所有者との交渉であるから、どちらが有利かは言うまでもない。

隣地所有者は、(近所の評判を気にしなければ)少し厚かましく筆界を主張してみてもよいかも知れない。売主は一般に、低姿勢で訪問し(時には手みやげを持って)、何とか隣地所有者のはんこをもらい、測量から境界標の設置、筆界確認書の作成までの全費用を負担し、調印した確認書の1部を隣地所有者に渡すことになる。

しかし本来、筆界確認書を作成しておくことは、筆界を挟む両土地所有者にとって好ましいことであり、その費用は折半でもよいくらいである。もし隣地所有者も近い将来、売却を考えていたとすれば、隣地所有者にとっては渡りに船で、素知らぬ顔で有利に交渉を進め、無償で筆界確認書を入手することができるということになる。

売主は、足下を見られると分かっていつつ不利な交渉にいどむという憂鬱を抱えるのである。中立の立場の人が筆界を公平に決めてくれればよいのであるが・・・。

さて、政府は地籍調査(BRIEFING.005参照)の推進に資するため、「都市再生街区基本調査」を進めているところである。にもかかわらず、都市部の地籍調査の進捗率は低い。また先日は民主党が「地籍調査・登記所備付地図の整備の促進策に関する提言」をまとめたところである。

一方、平成18年からは筆界特定制度も施行されている。

これらにより、何とかして売主の憂鬱を取り払い、土地の売却、開発等促進に寄与してほしいものである。


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