BRIEFING.206(2009.08.24)

不動産鑑定評価における消費税の扱い(1)

不動産鑑定評価額及びその査定過程の各種金額は、すべて消費税抜きとするのが原則である。しかし本当にそれでよいのかどうかは微妙で、悩ましい問題である。

消費税の課税対象は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等と輸入取引」である。これに該当しない取引、たとえば個人が自宅を売るといった取引は「事業として」でないから非課税取引である。

さらに、この定義に合致していても、@課税対象になじまない、A社会的・政策的配慮、といった理由から非課税とされている取引もある。

@としては土地の譲渡・貸付、商品券の譲渡他、Aとしては住宅の貸付、社会保険医療他がある。

不動産に関する取引について、課税(○)・非課税(×)を概観すると次表の通りである。

  宅地
のみ
 
    建物及びその敷地
  建物部分  敷地部分
住宅 非住宅 住宅 非住宅
譲渡  ×  ○  ○  ×  ×
貸付  ×  ×  ○  ×  ○
造成請負  ○  −  −  −  −
建築請負  −  ○  ○  −  −

ここで、次のような点が見出される。

ア.宅地の譲渡・貸付は×だが、その上に非住宅を新築して貸付ければ○。
イ.建物及びその敷地の譲渡は、建物○、敷地×と区分。
ウ.建物及びその敷地の貸付は、住宅×、非住宅○と区分。
エ.宅地の造成は○だが、その売買・貸付は×。
オ.住宅の建築は○だが、その貸付は×。

上記エ.オ.は、仕入れに消費税がかかっているのにそれを消費税としては価格に転嫁できず、本体価格に内包・吸収しなければならない取引である。

にもかかわらず、不動産鑑定評価においてはすべて税抜き、では実態と合わないのではないだろうか。次回さらに検討する。


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