BRIEFING.209(2009.10.15)

建物賃貸借における一時金の整理

建物の賃貸借契約に際し、賃借人から賃貸人へ支払われる一時金には、様々な名称のものがある。不動産鑑定評価基準では、次のように2つをあげて分類しているが、どうも適切でないように感じられる。

@賃料の前払的性格を有する一時金
A預り金的性格を有する一時金

ここでは、次のように分類し名前を付けてみる。

甲種一時金・・・・・賃借人に返還されない一時金(=@)
乙種一時金・・・・・賃借人に返還される一時金(=A)
未確定一時金・・・・契約期間などによって甲乙が決まる一時金

甲種は、礼金、権利金、敷引き、償却などである。授受された時に賃貸人(契約書では一般に甲)のものとなる。乙種は、敷引きや償却のない保証金や敷金、またはこれらがある場合のそれを控除した部分である。賃貸人が預かっているが賃借人(契約書では一般に乙)のものである。

通常の建設協力金は、乙種の特殊な形態と考えられる。

契約期間によって甲種の一部が乙種に振り替えられる契約もある。5年以上居てくれれば保証金を全額返すが、5年未満なら半分しか返さないといった具合のものである。年数の刻みがもっと細かいものもあろう。これが未確定一時金である。

但し上の例では、どんなに賃借期間が短くても半分は必ず返還されるのであるから、最初から半分は乙種、もう半分が未確定ということになる。そして5年経ったら未確定部分も乙種ということになる。

なお、乙種一時金であっても、解約時に通常の使用を越えた損耗分に係る原状回復費用として、一部が差し引かれる可能性は残るが、その部分は未確定一時金ではなく、乙種と確定していた一時金が、賃借人の負担すべき原状回復費と相殺された結果、還ってこなくなったものであり、ここで言う未確定一時金ではないと考える。

いわゆるオーダーリースなどの場合には、20年未満で解約すれば敷金全額没収といったような、制裁的な敷引きが見られるが、これは全額未確定一時金とすべきであろう。もちろん20年経てば全額乙種である。

では、無断転貸、用法違反の場合の敷金全額没収規定がある場合はどうか。これは乙種一時金と考えてよいだろう。でなければ、契約期間中、いつまでも未確定一時金ということになってしまう。

では、近年問題となっている更新料はどうか。これは、契約の更新に伴い授受されるものであるから、一時金と言うよりは賃料と同じ定期金に分類すべきと考えられる。

甲種・乙種・未確定、これでスッキリ整理できるのではないか。


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