BRIEFING.211(2009.11.19)

「更新料」無効か?有効か?

賃貸マンション等の建物賃貸借契約の契約期間は通常2〜3年であるが、賃借人が希望すれば契約は更新され、引き続き賃貸借関係が継続することとなる。

この更新に際し賃借人が賃貸人に「更新料」を支払うことが当初の契約で定められている場合がある。2年契約で賃料1ヶ月分とか、3年契約で2ヶ月分というのが多いのではなかろうか。

東京や京都に多く見られる特約で、昨今、その特約が消費者契約法に照らして有効か無効かが争われていることは、すでにご承知の通りである。

大阪高裁では10月に大津市内の賃貸マンションについて「信義則に反する程度にまで一方的に不利益を受けていたということはできない」とし、有効とする判決を下したところである。

しかし、同じく大阪高裁は8月に京都市内の賃貸マンションについて無効とする判決を下したばかりである。

両判決は、更新料がなかったなら賃料が高くなっていたであろうと判断している点で一致している。だが8月の判決は「更新料としてではなく、端的に、その分を上乗せした賃料の設定をして、賃借人になろうとする消費者に明確、透明に示すことが要請されるというべきである」と断じている点が特徴的である。

確かに、建物賃貸借に関して授受される金銭は多い。敷金・保証金、礼金・権利金、共益費・管理費、水道代・・・。実質的な経済的負担は分かりにくい。

さらに、解約予告期間、蛍光灯等の消耗品の負担、小修繕費の負担等の相違もある。

また、そもそも不動産には個別性がある。地域要因(交通接近性、環境等)、個別的要因(面積、階数、日照、設備、内装等)、管理体制・・・。

これらの賃料を形成する全ての要因を総合的に比較考量し、物件を選択することは容易ではない。

だが、携帯電話や航空運賃の料金体系はどうだろうか。多くのポイント制はどうか。

どれが得かは大変分かりにくいが、様々な消費者が、選択という手段でいくつかの種類の料金体系を育て、また消滅させてきたとは言えまいか。

消費者の利益を一方的に害するサービスが、市場で生き残れるはずはない。

そんな中で更新料は市場で淘汰されることなく生き残ってきた。今、司法や行政がこれを強制的に消滅させてしまうことは、消費者(賃借人)の選択肢を奪うことになり、さらには賃貸人の物件供給を妨げて競争を阻害し、逆に消費者の利益を害することになりはしないだろうか。

8月判決は「画期的」と評価され、10月判決は「常識的」と言われている。

最高裁はどう判断するであろうか。


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