BRIEFING.212(2009.11.30)

鑑定評価額の土地建物割合

収益還元法により求められる「建物及びその敷地」の価格(収益価格)には、土地建物の内訳がない。建物の賃料は、建物のみからの果実ではなく、その敷地と一体となった不動産からの果実であり、これを両者に分配することができないからである。

一方、原価法によって求められる価格(積算価格)には内訳がある。同等の土地を取得して同等の建物を乗せると・・・と考えてゆくからである。地域との不適合や土地建物の不均衡をどちらからどの程度減価するかという問題はあるにせよ、一応、結論は両者の合計額ということになる。

そうすると、積算価格≒収益価格≒鑑定評価額である場合には、積算価格の土地建物割合で鑑定評価額を按分すれば、鑑定評価額の土地建物の内訳として一応の合理性はあると言えよう。

しかし、積算価格と収益価格が大きく乖離し、両者を調整して求めた鑑定評価額と積算価格との間にも相当の開差が生じておれば、鑑定評価額は土地建物内訳を決定する指針を失う。

そのまま積算価格の内訳で按分という訳にはいくまい。

近年、証券化不動産の鑑定評価に際し、収益価格が積算価格を大きく上回るケースが増え、その鑑定評価額の土地建物内訳の判断の根拠が求められているところである。

ところで、会社がその純資産価格より大きな額で買収されるケースは珍しくない。その場合、超過分はのれんと判断される。

不動産についても同様に考えられないだろうか。

収益性のよいビルがあったとして、それと同等の土地を買い、同等の費用を投じて建物を建てたとしても、それと同様に収益があがるとは限らない。適切なテナント選択、契約手法、管理手法、そういったものが付随してそのビルの価格は上がるのである。

とすれば、それは土地の価格でも建物の価格でもなく、のれんに相当するものとはいえまいか。

「建物及びその敷地」の価格は、土地、建物、そして運営技術なのである。


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