BRIEFING.220(2010.04.05)

単価と総額のジレンマ

土地の価格水準は、単価で考える方が分かり易い。

したがって、地価公示や都道府県地価調査地の価格は単価で表示され、総額は表示されない(併せて面積が公表されているのでかけ算で求められる)。

銀座の山野楽器店の敷地が129億円だと言われてもピンとこないが、2,840万円/uと言われれば分かり易いだろう(ちなみに454u)。

しかし土地の価格を求める上で、総額がどれくらいかは重要な観点であり、特に一戸建住宅の場合、土地の総額、さらには建物を加えていくらぐらいか、サラリーマンがローンを組んで無理なく買えるか、という面からの検討が必要である。

さて、不動産鑑定評価によって求める土地の鑑定評価額は、最終的には総額であり、補足的に単価も付記される。そして、その有効桁数は上3桁とすることが多い(特に決まりはないが)。鑑定評価の誤差、精度を勘案すれば、それ以上細かく表示したところで無意味であろう。

ところが、次のような場合、困ったことが生じる。

総額90,100,000円(面積800u、単価113,000円/u)

総額を優先すれば(90,100,000円÷ide;800u→113,000円/u)で間違いないが・・・。
単価を優先すれば(90,400,000円←800u×113,000円/u)と総額が異なってくる。

鑑定評価では、最終的な調整を総額で行うのが原則であるから、総額優先でいきたいところなのだが、総額を(面積×単価)と一致させたいという気持ちも働くのである。

このような単価と総額のジレンマは、総額の1桁目が9や8といった大きい数字であるほど、かつ単価の1桁目が1や2といった小さい数字であるほど多く発生する。

これは、900と901とが0.1%しか違わないのに、100と101とでは1.0%も違い、いくつもの総額に同じ単価が対応するからである。

逆に単価で決定し、補足的に総額を付記するとすれば、総額1桁目が小、単価1桁目が大の場合にこのことが生じる。

同じ単価にいくつもの総額が対応するからである。

この「単価と総額のジレンマ」は、鑑定評価の本質には関係のないことであるが、実務上は悩ましく、結構説明に苦労がいるものなのである。


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