BRIEFING.221(2010.05.10)

取引事例比較法における土地建物配分の限界

取引事例比較法によって求められる更地の比準価格は、取引価格・取引時点の分かっている更地(@)や自用の建物及びその敷地(A)の価格形成要因と、対象不動産の価格形成要因とを比較(BRIEFING.145146147参照)することによって求められる。

そして、@の取引よりもAの取引が多いために、実務上、Aを多く採用することが多い。

ところが、Aを採用した場合、その取引価格を土地と建物とに配分する必要があり、@を採用した場合より、一手間加わる分、誤差の生ずる余地も1つ増えるということになる。

Aの場合でも建物が新築なら建物価格の査定に比較的誤差は少ないと考えられるものの、中古となればそうはゆかない。特に地価水準の低い地域においては注意が必要である。

さて下表は、建物及びその敷地における建物の評価に20%の誤差(1,500万円と1,200万円)が生じた場合に、それが残る土地の評価にどれくらい影響を及ぼすかを、地価水準の異なる3つの地域を想定して比較してみたものである。地積は200uとする。

(1)地価水準の高い地域
   取引総額 建物価格 土地価格 土地単価  率
8,000万円 1,500万円 6,500万円 325千円/u  
8,000万円 1,200万円 6,800万円 340千円/u  +5%
 
(2)地価水準の中程度の地域
   取引総額 建物価格 土地価格 土地単価  率
4,000万円 1,500万円 2,500万円 125千円/u  
4,000万円 1,200万円 2,800万円 140千円/u +12%
 
(3)地価水準の低い地域
   取引総額 建物価格 土地価格 土地単価  率
2,000万円 1,500万円  500万円 25千円/u  
2,000万円 1,200万円  800万円 40千円/u +60%

(1)においては、建物で20%もの差がついても、土地に及ぼす影響は小さい。しかし(3)においては、大きな影響を及ぼすことが分かる。

更地の取引事例が少ないという事情は如何ともし難いが、地価水準が低い場合には、土地建物への配分の限界を意識せねばなるまい。


BRIEFING目次へ戻る